「バナナの木」と言われたりしますが、実際には木本ではなく草本の多年草です。その意味では、バナナは正確には果物ではなく野菜(果菜)に分類されます。数メートルの高さに伸びた茎のような部分は偽茎(仮茎)と呼ばれ、実際には、葉鞘が幾重にも重なり合っているもので、茎は地下に短く横に這います。
花(花序)は偽茎の先端から出て下に向かってぶら下がり、1本の果軸に複数の果房がつき、成長してバナナの房になります。各果房は10本から20本程度の果指から成り、果指一つ一つが成長して一本のバナナになります。尚、開花は一本の偽茎につき一回のみで、開花後は枯れてしまいます。
果皮の色は品種によって異なり、一般的に知られるものは緑色から黄色ですが、桃色から紫まで多様です。収穫後時間が経過するにつれて皮の表面に浮かぶ黒い斑点状のものをスウィートスポット 、または、シュガースポットと呼び、簡単な熟成のバロメータとなります。
バナナは熱帯地域を中心に世界の広い範囲で栽培されています。FAOの統計によると、2009年の時点で果物バナナの全世界での年間生産量は9581万トン、料理用バナナの全世界年間生産量は3681万トン、総計は13262万トンです。バナナは熱帯地域から世界市場へ長距離輸送しなければならないため、貯蔵寿命を長くするために、果実が成熟する前に収穫されます。果実は慎重な取り扱い、ポートへの迅速な輸送、冷蔵配送を必要とされます。13℃で3~4週間の貯蔵および輸送を可能にします。主な輸入国はアメリカで、1998年から2000年の統計では世界の全輸入量の33%を占めていました。次いで、ECが27%、日本8%となっています。
生食用バナナは、多くが大規模なプランテーションで栽培されます。生産量ではインドが28%を占めますが、ほとんどはインド国内で消費されているため、輸出量ではラテンアメリカ諸国が8割を占めます。これは、ラテンアメリカ諸国およびフィリピンにおいてはバナナが当初から輸出産業として開発されたのに対し、インドやアフリカなどでは先ず自給用や国内消費用に生産の主眼が置かれているからです。
キャベンディッシュ種などのデザート用バナナは、皮を剥いてそのまま、或は、ケーキやヨーグルトに入れるなどして生食されます。牛乳や氷などとともにミキサーにかけてジュースにすることもあります。なお、乾燥させたものはバナナチップ(ドライバナナ)として販売されています。
料理用バナナも東アフリカや中央アフリカでは主食とされる重要な作物であり、世界のバナナ生産量のほぼ4分の1を占めます。生産量としてはウガンダが飛びぬけて多く、2009年には951万トンと料理用バナナ生産量の4分の1を占めています。料理用と生食用を合わせると、ウガンダのバナナ生産量はフィリピンを抜いて世界第2位となります。
バナナの揚げ物としては、バナナチップスのように薄く切ってパームオイルで素揚げにしたもの(パームシュガーの黒蜜をかけたものもあります)、マレーシアでは衣をつけて揚げたピサンゴレン(Pisang goreng)が人気のデザートです。バナナのパンケーキは、バックパッカーや南アジア・東南アジアの旅行者の間で人気があるようです。
バナナの葉は柔軟性と防水性があるので、調理器具や食器として用いられます。インドカレーやミーゴレンがバナナリーフの上に盛り付けられたりします。